ふくしまの女性たちの物語 菅野瑞穂さん 

きぼうのたねカンパニー設立レセプション2013年3月17日(2)

知ることは、生きること

土地をそのままにしておくと荒れてしまう。農地があり、自分たちの住む家がある。そういう場所で、しっかり農業をしていく。耕し続けるだけでない。何かを続けていくことが大事だと瑞穂さんは感じている。 自分たちが食べるものを知らない限り、不安になる。だから「知ること」は生きることにつながると思っている。「知ることは生きること」というキーワードは、ここにいるからこそ、すごく大事な言葉になるのではないかと。 今まで10回以上イベントをやり、いろいろな方が訪れてきてくれた。何度も来てくれる方もたくさんいる。そういう人たちとのつながりは、すごく強いだと感じている。人との交流や農業体験を通して伝えることの重要性を感じている。それが「きぼうのたねカンパニー」の始まりだと思っている。

「人が集まる」という空間が、これからの地域に必要

おじいちゃんやおばあちゃんは「ここに来ても何もない」という。何もないのではない。瑞穂さんをはじめとする、これからの若い世代が「この地域を良くしよう」「この地域でいいものを作ろう」と発信していかないと、じいちゃん、ばあちゃんたちが、どんどん元気をなくしてしまう。 実際に「放射能があって、孫には食べさせられないから田んぼをやりたくない」とか「若い人たちに言われたから、農作業をあまりしてない」というお年寄りがいる。きぼうのたねカンパニーでは、そういう人たちにも「この地域で生きている」という、希望を持てるような活動を作れるのではないかなと考えている。

きぼうのたねカンパニーの構想

具体的には、県外から、どんどん福島県に来ていただきたい。東和で農業を学んでもらったり、自然を体験したり、地域で手に職をもっているおじいちゃん、おばあちゃんとふれあったりできるような「人と自然がつながる体験プログラム」を作りたい。 瑞穂さん自身が東京に4年間いたのでわかるが、首都圏にいると時間に追われることが多い。それを東和に来てもらって、ゆっくりと過ごしてもらい、感じてもらう。そして皆さんに「きぼうのたね」をまいてほしいと思っている。 すでに旅行会社と手を組んで、3月、5月、10月と来ていただくことが決まっている。「福島の農業を応援」するために首都圏の消費者グループが、稲刈りやなすの定植などに継続的に来て下さっている。このような「目に見える関係」を継続的に続けていくことが大切だと考えている。 一方で、福島県内に住んでいる人たちとの交流も大切にしていきたいと考えている。福島県にいても農業に携わっていない人もいる。その人たちに農業のことを知ってもらいたい。 ほかに「きぼうのたね」の会員募集をしている。田植えや稲刈り体験などを通して、少しでも自分の食べる苗を作ってみようという人のためのオーナー制度を設ける。自分のまいた種が育った収穫物をオーナーに届けている。会員には、オリジナルTシャツもお届けできればいいなと思っている。

みんなで、きぼうのたねを作っていく

「福島の大地に希望を届けるという」理念の下、今回会社を立ち上げたが、まだ経験も浅い。自分がこの道を歩んでいく決心はかたいが、いろんな人に支えられながら、いろいろな人を巻き込みながらやっていきたい。そのためには多くの方とつながりたい。いろいろな意見を交わしながら、みんなで「きぼうのたねを作っていく」というイメージでやっていきたい。 レセプションに続き、南相馬市出身で、原発から11キロ圏内に住まいがあったため避難、現在は新地町で新たに農業を始めている三浦草平(26歳)さんの話を聞いた。その後、この日最後のイベントになる、きぼうのたねまきをした。参加者全員が、そとに出て「ありがとう」と言いながら、ポットにたねを蒔いた。種はひまわりと、サニーレタス。それぞれが家に持ち帰り育てる。生育の様子はブログやフェイスブックなどの方法を使って教え合う。きぼうのたねを通して、みんなが一つの家族になるイメージだ。たねまきを終えると参加者一人一人が板にメッセージを書いた。その板を手に持って全員が記念撮影した。