防災女子力UPセミナー受講記(3)
多様な専門機関、専門家、ボランティア等との連携がなぜ必要なのか(3)
天野氏の講演後、講演会場になった福島県男女共生センターを避難所に見立て、避難者受け入れのシュミレーションゲームを行った。使用したのは「避難所運営ゲーム(HUG)」というカードゲームである。このカードは避難所運営を皆で考えるためのひとつのアプローチとして静岡県が開発したもので、避難者の年齢や性別、国籍やそれぞれが抱える事情が書かれたカードを、避難所の体育館や教室に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できるか、また避難所で起こる様々な出来事にどう対応していくかを模擬体験できる。
シュミレーションゲームの指導者は、北村育美さん。(元中越防災安全推進機構地域防災力センター、現在は、おだがいさまセンター職員)彼女は、2011年4月17日にビックパレットふくしまに支援に入った。今まで経験したことのない巨大施設で、通路のあらゆるところに避難者がいた状況。どこに誰がいるのかわからない中、足湯などの方法を通して、避難所内のコミュニケーションを作る方法を模索していったスタッフの一人だ。
受講生は3つのグループに分かれ、北村さんから災害当日の天候、災害の状況を説明してもらった。受講生らはゲームに入る前、あらかじめ男女共生センターの施設を見学し、設備の配置なども把握している。テーブルには男女共生センターの見取り図、マジック、付箋、そして避難所運営ゲーム(HUG)が置かれた。グループのうちの一人が読み手となり、カードに書かれた避難者の状況を読み上げる。他のメンバーは、避難場所を決めていく。実際の避難所運営は一刻一秒を争う。どんなことが起こるのか想定できない。受講生たちは、いつの間にかゲームであることを忘れて、真剣な表情で避難者の誘導をしていた。
ゲーム終了後、グループ内で感想を話し合いそれぞれのグループが発表した。その後、天野氏が避難所運営の経験を話した。 ・避難所においては、力の強い人が良い場所を取ってしまう。また良い場所からうまっていく。
・一部損壊の人は、いったん避難するが、落ち着くと帰宅する。一方、建物が全壊した人は自宅に戻れない。
・避難所に来ていない人の対応も必要である。もしかしたら避難所に来たくても、来れないかもしれないからである。
・地域ごとに場所を分けるのも一つの配慮である。
天野氏は言う。地域のことをよく知っていること、普段からの地域との関わりが大切である。つまり地域間のネットワーク作りが大切である。地域が抱えている問題は、災害時に表面化するのだと。だから、日頃から「どういう地域をつくっていくのか」を地域全体で考えていく必要があると。つまり災害時の備えは、地域間の日頃のコミュニケーション力なのである。