なぜ小さな温泉宿で500回も講演会を開催することができたのか? (1)2018.4.11

柳津町で温泉宿を営んでいる 塩田恵介さん。そのお人柄に惹かれて、また斬新な考え方の下、塩田さんがお宿で開催する講演会に集まる人々は多い。今回、その秘訣について、塩田氏からお話しを伺った。塩田さんがお持ちのスキルは、イベントや講演会を開催する上で非常に貴重なノウハウがつまっていた。その一部を公開する。

1.自己紹介

旅行会社に4年ちかくつとめて柳津に戻った。親が公務員。帰ってきた当時は「簡単に商売できるだろう」と思い上がっていた。ところが商売は難しい。今にいたっても難しい。

 

帰ってきたときは「滝のや旅館」だった。でも似たようなお宿さんが近くにあった。電話がかかってきて「たきのや旅館ですか?」「はい」って答えて、お待ちしていてもお客さんが来ない。でも翌日「行ったんだけどな」という話になる。お客さんは違うお宿さんに泊まっていた。近隣の温泉に「滝の湯(たきのゆ)旅館」「〇〇の宿 滝の湯」がある。それと「たけのや旅館」もある。うちは「たきのや」。それで困ってしまって「なんかいい方法ないかな」と思って。学生時代にたまたま本を読んでいたときに平岩弓枝さんが書かれた「花ホテル」という本があった。中味はコートダジュールのホテルの話。それがおもしろいなと思って「じゃ花ホテル滝のや」にしようと考えた。

 

話が脱線したときは、柳津の景色をスライドに入れます。(講演中、たびたび柳津の美しい景色が登場した)

2.やっていること(一部)

●花ホテル講演会

●シークレット婚活パーティー

(1勝1敗、20引き分け…というのは柳津町以外の参加者がカップルになった)

柳津町の人口は今、3,500人。自治体と共同開催をした事業もあった。自治体と一緒にやるといいことがいっぱいある。県庁職員がわざわざ来てくれる。今月4月30日には只見線のブライダルトレインも企画。

 

3.残念ながら断念したこと

  

●徳一菩薩シンポジウム 

関わっていながら継続できなかった。うまくいかなかった事柄に対しては「何が悪かったのか」と考えるのも大切。なぜならば必ず原因があるから。その原因を自分で書き出してみること。それが大事。

 

●全国門前町サミット

いいなぁと思って個人的に参加していた。第8回でとまってしまうかもということから私のところに相談がきた。「岐阜県が終わったので長野県はどう?善光寺もあるし」と仲間を通じて言ってみた。ご縁がありその後、柳津の円蔵寺で開催。そのあとの継続的な仕掛けが難しい。

 

●柳津のフルマラソン大会

「猪苗代町にすごい人がいるから話を聞くといいよ」と言われて聞きに行った。1時間くらい話を聞いているうちに自分もやれそうな気持ちになった。すごい人の話を聞くと、自分もやれそうな気持ちになる。こんな分厚い資料を作って警察にも行った。でも「無理無理」と言われた。最終的には300人参加してくれ、ボランティアスタッフが70人協力してくれた。おもしろかったが、ひとり相撲で完全なる失敗。

なんでやめたかと思うと、マラソン大会はやればできる。もしかしたら10人、15人でもできる。でもそれではダメ。町をあげて町民一体になってやらないとうまくいかない。岐阜県の5,000人もいない小さい町で行われている大会には、参加者が2万人くらい来る。町の一大行事になっている。ゴールに幼稚園の子どもたちが待っていて、ゴールすると「お帰り」「お帰り」と言って笑顔のハイタッチ。出発前のところには小学生の子どもたちが作った「ようこそ」という絵がたくさんあって、それが「すごくいいな」と思った。いつかそんな大会にしたいなと思いながらも残念ながら続かなかった。

 

●柳津町麻雀大会

「麻雀大会をやってくれ」と依頼されて私のところでやった。おもしろいけど儲からなかった。私一人が損するならいいけど、旅館全体が、、、たとえば女房から「これやって、なにか意味があるの?」と言われてしまうと続かない。やった結果、赤字になるならともかく、やる前から赤字になるとわかっているイベントはダメですね。

 

ここに書いたほかにも、いっぱい失敗はしている。自分たちだけでは、できないこともある。それは仕方ない。でも「やめた」とは言わない。いつかやってやろうと思っている。だから失敗したとは思っていない。